滲出性中耳炎

滲出性中耳炎

滲出性中耳炎とは

中耳(鼓膜の奥の部屋)に液体がたまり、聞こえにくくなる病気です。中耳に液体がたまると音が鼓膜から伝わりにくくなります。
急性中耳炎は急激に痛みや熱が出ますが、滲出性中耳炎は親が気づかないところで軽度の難聴の状態になっていたり、急性中耳炎の原因になる場合もあります。
滲出性中耳炎は数週間で治る場合もあれば、何ヶ月~何年も続く場合があります。また、急性中耳炎から滲出性中耳炎に移行することもあります。

原因

なぜ液体が溜まるのか

原因鼓膜の奥と鼻の奥は耳管という管で繋がっています。
鼻の炎症やアデノイド肥大があると、耳管の出口が詰まったり狭くなったりするために、中耳に液体が貯まります。また鼻すすりは耳管を狭くする(中耳を陰圧にする)ので滲出性中耳炎になりやすくなります。
また、耳管には、中耳の気圧を外気圧に合わせる働きがありますが、風邪をひいたりすると、耳管が腫れてしまうのでこの機能が悪くなり、気圧のコントロールが十分にできなくなります。そのために、中耳の気圧が徐々に低くなり、鼓膜が外から見てわずかにくぼんだ状態になってしまいます。このような状態が続けば、溜まってきます。
滲出性中耳炎は、耳管開口部周囲の炎症による耳管の働きの悪さが原因で起こるのですが、この耳管開口部周囲の炎症は、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎(蓄膿症(ちくのうしょう))、急性咽喉頭炎、風邪、アレルギー性鼻炎、アデノイド肥大などで引き起こします。鼻や喉周辺の炎症のすべてが滲出性中耳炎の原因にもなるということです。

症状

滲出性中耳炎には以下の主な症状があります。

  • 難聴
  • 耳のつまり(耳閉感)
  • 耳鳴

急性中耳炎のように激しい痛みを感じることはなく、滲出性中耳炎は痛みがほとんどなく熱も出ることはありません。10歳以下の小児に多くみられる病気なのですが、子どもの場合は自覚症状があまりないことも特徴です。症状を自分で訴えることができないために、お子さんに以下のような行動が見られる場合は、難聴になっている可能性がありますので注しましょう。

  • 声が極端に大きくなってきた
  • 呼びかけても振り向かない
  • テレビの音量が大きくなってくる

治療法

当院では、滲出性中耳炎を下記の主な3つの方法で治療をしていきます。

  1. カルボシステイン・・・粘膜正常化作用をもつ
  2. 抗生剤(マクロライド系)の少量長期投与
  3. 耳管通気・・・鼻の奥の耳管の出口から中耳へ空気を送り込んで中耳炎を改善する(患者さんのご協力を得られる場合)

滲出性中耳炎の治療は長期間かかることは少なくありません、最後までしっかりと治療を続けることが大切です。また、風邪や副鼻腔炎があればその治療を行い、鼻の奥の状態を改善させることも大切な滲出性中耳炎の治療となります。

※当院では、薬を飲む以外の治療法として、耳管に鼻から空気を通して気圧を正常化し、溜まっていた浸出液を中耳から出す家庭でもできる自己通気法の「オトヴェント」があります。
オトヴェント

さらに治りが悪い場合には、

  1. 鼓膜切開・・・鼓膜に小さな穴をあけて、奥にたまっている液体を吸い出す治療法
    鼓膜切開
  2. 鼓膜チューブ留置術・・・鼓膜切開のあと、穴がふさがらないように特殊な管を入れておく治療法
    鼓膜チューブ留置術

主に上記の2つの治療を行っていきます。

気をつけていただきたいこと

  1. 風邪をひいて、鼻が調子悪くなると、滲出性中耳炎が治りにくくなります。
    風邪をひいたら早めに受診してください。
  2. 症状がなくなったからといって、完治しているとは限りません。
    滲出性中耳炎を放置すると、将来的に手術が必要になる中耳炎(癒着性中耳炎、真珠腫性中耳炎)になることがあります。治癒まで時間のかかることも多いのですが、鼓膜が正常になるまで通院しましょう。