いびき・睡眠時無呼吸症候群
原因と症状
いびきの主な原因として、
鼻腔から喉頭までの空気の通り道、「上気道」と呼ばれる部分のどこかが、なんらかの理由で狭められたことにあります。上気道が狭められると呼吸したときに、粘膜や分泌物が振動してしまい、この振動音こそがいびきの正体です。
考えられる具体的な原因には、
- 鼻やノドの病気や炎症(気道の狭窄がある場合)
- 口呼吸(気道の狭窄がある場合)
- 太りすぎやアゴの骨格が小さい
- 疲労・ストレス
- 飲酒、老化、薬物などによって筋肉がゆるんでいる
などが挙げられます。
気道が狭められれば、当然、空気の通りも十分ではなくなり、体内に取り込まれる酸素が少ないと、酸素を供給して炭酸ガスを排出する換気機能が低下して、様々な悪影響があらわれてきます。
いびきは気道が狭い中を息が無理矢理通って起こるので、当然いびきをかいていない状態より酸素の摂取量がすごく下がってしまいます。「ただいびきをかいている」、というだけではなく、「寝不足」にもなりますし、その結果「疲れが取れない」、「目覚めが悪い」、「だるい」、「昼間に居眠りしてしまう」、といった症状が起こります。いびきはともかく、睡眠時無呼吸までになると、高血圧(通常の方の2倍)。心疾患(通常の方の4倍)や脳血管障害(通常の方の4倍)など、疾患になる危険性を増すことがわかっています。
統計的にも交通事故の率が高いといったデータもあります。特に日中に車を運転する仕事に就かれている方は要注意です。また、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、不整脈などの心臓病、脳血管障害が起こりやすいと言われています。
また、体内の酸素が不足して二酸化炭素が増加すると、血液が酸性に傾き、血中のブドウ糖の量を調整しているインスリンの分泌が悪くなります。これは糖尿病の第一歩です。循環器や呼吸器にも負担をかけるので、高血圧症や不整脈を引き起こしたり、心筋梗塞、心不全、またひどい場合には突然死を招くこともあります。
このように、いびきは自分で自分の首を絞めているようなもので、慢性的な酸素不足に陥る可能性があり、ひいてはさまざまな病気をもたらす危険性をはらんでいます。
治療法
いびきを治療する場合、まずは原因を特定することが第一になります。原因を特定した後に、状態により鼻や咽喉の治療をはじめとして、総合的な治療をおこなっていくことになります。いびきは、身体的な要因もありますが、日常の生活習慣も大きく影響する症状ですので、何よりも生活習慣の改善が重要となります。
当院で行っている(指導している)いびきの治療は大きく分けて6つあります。
- ダイエット・・・太っている人は痩せないと治りません。太っている人というのは体のどこか一部が太っているわけではなく、全体的に脂肪が付いています。喉の中も例外ではなく。脂肪が付いて狭くなっていて、まるで肉巻き状態になってしまっているのです。ですから今いびきで振動している部分を手術して切り取ったとしても、すぐに周りから脂肪がついてきて元の状態に戻ってしまいます。うちに来られる方でも、「まず痩せてください」という人もいます。
- 呼吸装置による改善療法・・・寝ている間の呼吸を助けるCPAP(シーパップ)という装置があります。一定のリズムで空気を送る装置で、一晩中使う人も、1日に何時間かだけ使う人もいます。数時間だけしか付けないけど翌朝頭がすっきりする、と言う人もいます。以前は機械が大きく、持ち運びに不便でしたが、最近ではコンパクト化され、出張時に持ち運びするビジネスマンの方もいらっしゃいます。
- 手術・・・扁桃腺が大きい場合、これがいびき・無呼吸の原因となっている場合があります。こういう方には手術をお勧めしています。ただし、手術には入院や、全身麻酔を必要とするということ、手術で改善したいびきも肥満や加齢で再発する場合があることをご理解頂かなくてはなりません。また、食事が口から鼻に逆流する・のどの違和感などの合併症のリスクもあります。
- マウスピース・・・のどの形によっては歯科用マウスピースを装着するといびきが軽減される場合があります。
- 体位を変えて寝てもらう・・・軽い無呼吸では横臥(横向き)で寝ると効果がある場合もあります。
- 寝酒を止めたり、睡眠薬を止めるなど、生活習慣を変えることで効果がある場合があります。
睡眠時無呼吸症候群の重症度の判定のためには、
- 入院検査
もしくは
- 簡易アプノモニターと呼ばれる計測機器をお持ち帰りいただき、2日間続けてご自宅で就寝される際に装着していただき、後日お持ちいただいて、解析を行います。
中症度~重症度の方の場合
中等度の方はより精密な判定を行うために、総合病院で終夜睡眠ポリグラフィーと呼ばれる検査(1泊入院)を受けていただき、必要に応じてCPAP治療を行います。
※当院では、まず正確な入院検査を(CPAPの圧測定のために)お勧めしております。
睡眠時無呼吸症候群
いびき自体は病気とは言えませんが、「睡眠時無呼吸症候群」とは、睡眠中に呼吸が数十秒間も止まる発作をひと晩に何十回も繰り返し、そのたびに反復していびきをかくものです。昼間の強い眠気の原因になったり、心筋梗塞や脳卒中などにつながることもあり、治療が必要です。日本人で習慣的にいびきをかく人は2千万人以上もいます。睡眠時無呼吸症候群の人は、そのうち約十パーセント、約2百万人と考えられています。
睡眠時無呼吸症候群になると、眠気が日中、突然に襲ってくることもあり、例えば、車の運転をしているときに突然に猛烈な睡魔が襲ってきて眠ってしまい交通事故を起こしたりすることも多いです。あるいは新幹線の運転手の居眠り運転事故も記憶に新しいでしょう。